- 数理情報系では、「数理と他の分野との連携の回復」が隠れたテーマである。現代数学の特徴は「抽象化」ということにある。抽象化と公理的扱いは、元々の具体的応用に結びついたアイデアから「よけいな具体性」を捨て去り、抽象的な本質のみを取り出すというメリットがあり、本来考えていた分野とは全くかけ離れた応用を見いだすという効果もあった。
- しかし、数学の外の世界から見ると、「抽象化」は、数学を「役に立つ道具」から、孤立した学問に変えてしまったようにも見える。実際には、数学は「役に立てることのできる道具(ただし用途は限定せず)」に変わっただけなのだが、この”用途は限定せず”という側面は、外の世界から数学へ”発注する”ことを難しくしてしまった。結局の所、数理の側から”就職活動”をする以外に、連携を回復する道はなさそうである。しかし、これには数理の研究者に、他の分野についての感性を身につけるという、直接の成果に結びつかない地道で長期的な努力を要求する。
- とにかくも、第一歩としては、素人ととしての気軽な質問を許容する雰囲気作りから始めるしかない。数理系でも、専門的な活動を重視することは言うまでもないが、その他にも”初等的な”レクチャーやシンポジウムを頻繁に行い、連携に向けての柔らかな雰囲気作りという長期的作業を行っていきたい。